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時代感も、ヒューマンスケールもちょうどいい街。

いま「ていねいな暮らし」が流行になっていますが、約20年前から「暮らし」をテーマに活動を展開してきた大阪のクリエイティブユニットgrafは、個人的にも大好きな会社のひとつ。今回は代表の服部滋樹さん宅のご近所、西区・京町堀にあるオススメスポットに連れて行ってもらいました。京町堀は大阪の二大繁華街(キタ=梅田駅周辺、ミナミ=難波駅周辺)の中間にあるエリア。美味しいお店や手入れが行き届いた靭公園、コーヒーとワインのお店などがぎゅっと詰まったおしゃれな街。グルメな服部さんが「ここ美味しいよ。」と教えてくれる店はどれもハズレがなく、改めて大阪の食のレベルの高さを実感しました。それもそのはず、服部さんと歩いた京町堀周辺は江戸時代に蔵屋敷が立ち並び、全国から食材が集まった場所。いまもどこかにその名残を留めるユニークな街でした。

インタビュー・テキストヘメンディンガー綾

大阪府出身。高校卒業後、東京に移住。情報誌、ファッション誌の編集を手掛け、結婚を機に2009年に帰阪し、フリーランスに。大阪府下にある古民家で田舎暮らしを満喫しすぎているため、大阪市内の土地勘がすっぽり抜けている。旦那様はフランス人。

職場と家をつなぐ街は、長い廊下みたいなもの

服部滋樹さん

1970年生まれ、大阪府出身。graf代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgrafを立ち上げる。建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手がけ、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮している。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。

ヘメンディンガー綾

私、生まれも育ちも大阪ですが、高校を出てから東京に行ってしまったので、大阪市内に来ると右も左もわかりません。その上、市内に来るとgrafの1階のカフェとショップでお茶ばかりしてるので、なかなか他の店の探検ができていません(苦笑)。

服部さん

マジで?いいところいっぱいありますよ。

ヘメンディンガー綾

今日は宜しくおねがいします。服部さんはずっと西区にお住まいですか?

服部さん

僕は大阪府吹田市出身なんですが、大学を卒業してgrafを立ち上げたころは大正区に住んでたんです。そこは船のパーツをつくる職人さんが多くて。実はgrafオリジナルの椅子の座面は船のスクリュー(エンジンのプロペラ部分)の金型をつくる職人さんと一緒に開発したんですよ。

(grafオリジナルの椅子「プランクトンチェア」)

ヘメンディンガー綾

え!あの椅子の緩やかなカーブが、船のパーツに由来するとは!水の都大阪ならではって感じですね。いまだに職人さんが多いんですね。

服部さん

そうですね。大正区に住んでいた頃、職人さんが住むような一軒家で仲間と共同生活をしていたんですが、母親の友人が京町堀に一軒家を持っていて、そこを借りることになって引っ越してきたんですよ。

ヘメンディンガー綾

どんなお家なんですか?

服部さん

50平米くらいある2階建ての古い木造の倉庫で、1階をgrafの倉庫にして、僕は2階に住んでます。天井を抜いているので、屋根の裏がそのまま見えるんです。床から天井まであるガラス張りの大きな窓があって、寝転んで見上げると満月が見えたりも。

ヘメンディンガー綾

おしゃれー!何年くらい住んでますか?

服部さん

もう12年くらい住んでいるかな。職場の連中やクライアントと一緒に食事会することもありますよ。

ヘメンディンガー綾

あら、素敵!お住まいになって、長いんですね。職場と近いから長く住んでらっしゃるのですか?

服部さん

うーん、それもあるけど。僕はある意味、街も家と捉えた方が楽しいと思っているんです。良い街ってさ、家だけが良いんじゃなくて、周囲にあるお店が良かったり、店の点在の具合が良かったりするじゃない。特に大阪市内に住むなら、それが大事じゃないかと思うんですよ。だから僕にとっては仕事場から家までの距離は「廊下」みたいなもので。プライベートキッチンやプライベートバーをくぐり抜けて家に帰るみたいな感じかな。

知る人ぞ知る名店がひしめく京町堀

ヘメンディンガー綾

さすが、デザイン界のキングは空間把握のスケールが違いますね(笑)。じゃあ、いまからお昼をいただくお店は、さしずめ服部さんのキッチンといったところ?

服部さん

偉そうにプライベートキッチンと呼べるほどではないですけど、みんなが夜にワイワイ集まる場ですね。

ヘメンディンガー綾

いいですね!

服部さん

この通りはほかにも良いお店がすごくたくさんあります。身体がしんどいなと思ったら野菜を食べに行くフレンチの店とか、大人な寿司屋とか。さてさて、目当てのお店に着きました!

ヘメンディンガー綾

サンドイッチの店って書いてますね…。

服部さん

うん、お父さんお母さんの代でサンドイッチ屋を営んでいて、昼はサンドイッチとカレーが食べれて、夜になるといきなりバールに変わるんです。

ヘメンディンガー綾

すごいユニークなお店のあり方!東京ではお目にかかったことない感じだわ。

服部さん

僕はもっぱら夜に来るんですが、手前の冷蔵庫にワインが入ってて、お客さんが自由に注いで、最後に何杯飲んだか自己申請するの。食通の間では、大阪に来たらわざわざこの店に来るというぐらいの名店です。

ヘメンディンガー綾

システムがおもしろーい!信頼関係で成り立つバールですね。外国にあるバールも、そもそもは地域コミュニティの溜まり場という役割もあるから、それに近い雰囲気ですね。人との距離が近い、大阪ならでは。

僕が移住しなかった理由

ヘメンディンガー綾

ところで、服部さんは東京に移住しようと思ったことはないんですか?

服部さん

ないですね。以前は東京にも事務所があったし、一時期代々木上原周辺にも住んでいたけど、ものづくりという観点で考えると断然大阪なんですよ。

ヘメンディンガー綾

さっき、grafのお話を伺った際にもおっしゃってましたね。職人さんが近くにたくさんいるんですよね。

服部さん

全国のスターバックスの照明のシェードの一部は「へら絞り」(金属板を回転させながらへらという棒を当てて加工する)という技術を使っていて、すべて大阪・生野区の職人さんが請け負ってるんですよ。東京の職人さんは小ロットでは受けてくれないんだって。そう考えると、ものづくりへの情熱で人が動くのが大阪らしさだと思うんですよ。僕もgrafを立ち上げた当初はイエローページを見て、職人さんのところに通って「こんなものをつくりたいんです。」とお願いして、熱意を汲んでもらってましたね。というわけで、ものづくりしたい若い人たちは大阪に来たらいいと思いますね。

ヘメンディンガー綾

職人さんの近くにいたからこそ、grafがあるんですね。

服部さん

いまも全国いろんな業種の産地に行きますが、ここまでものづくりが盛んな街は他にはあんまりないなと思うんです。たとえば、陶芸の産地だったら陶芸についての仕組みしかないじゃない。でも大阪はハイテク産業、サイエンス、周囲にすべて揃ってるわけですからね。

ヘメンディンガー綾

ものづくりの層が分厚いんですね。ところで、お仕事じゃない日って、服部さんは何をされてます?

服部さん

早く起きたら洗濯や掃除をしてますよ。

ヘメンディンガー綾

え?!ちょっと意外です。社長自ら…。マメなんですね。じゃあ平日のお仕事の後は?

服部さん

出張していなかったら、この辺りの飲み屋に引っ張られてますね。

ヘメンディンガー綾

あ、それはなんか想像がつくかも(笑)。この辺りはどんな土地柄ですか?

昼と夜の顔が違う、靱本町

服部さん

そうですね、昼間と夜の顔が違ったり、平日と週末の顔が明らかに違うエリアで、それが面白いなと思いますね。あと、靭公園が街の真ん中にあるので、なにとなく日常をニュートラルにしてくれる。単なる都会の楽しみの場だけではなくて、ゆったり関係性や仕事などを構築していくってことは、ここにいるとやりやすいかもしれないですね。いろんな人たちが集うから、いろんなアイデアも集まるし、対話する場所もけっこうあるから。世界に通用する写真家やグラフィックデザイナー、アートディレクターなどなど、面白い人たちが夜な夜な集っているんですよ。

ヘメンディンガー綾

夜と昼の両方が楽しいって、大事ですね。服部さん、靭公園はよく来ますか?

服部さん

よく来ますよ。いまは少し休んでるんだけど、以前は週に2〜3日ランニングしてました。

ヘメンディンガー綾

超ご多忙なのにちゃんと運動されてるんですね。それも意外な一面です。

ヘメンディンガー綾

きちんと整備された公園があって、素敵なお店がいい塩梅に詰まってる。このクリーンな感じは、東京だと駒沢公園周辺や千駄ヶ谷にも雰囲気が似てるけど、河と橋がとても多いのは大阪らしいし、江戸堀や土佐堀といった地名からは歴史的な厚みも感じる。今日歩いた京町堀周辺って、歴史的にはどういうエリアなんでしょう。

服部さん

この辺りは江戸時代に開削された河が多いんです。土佐堀は昔土佐商人が群居した場だったみたいで、いまだに乾物屋さんとか多かったりします。江戸堀はむかし蔵屋敷が立っていて、舟で木材を運んだりしてたみたい。ここから少し離れるけど、南堀江は家具団地として栄えて、いまも家具屋が多いし。

ヘメンディンガー綾

確か、あの辺りにはいまだに欄間を彫ってる職人さんの家もありましたね。やっぱりものづくりが息づいてる街なんだわ。東京では浅草から隅田川の向こう側に職人さんなどもちらほらいますが、あの辺りはおしゃれな店が少ないんですよ。京町堀は、新旧がぎゅっと詰まっていて、とてもユニークなエリアです。

服部さん

そうですよね。じゃ、いまから行きつけのコーヒー屋に行きましょうか。

ヘメンディンガー綾

わーい、コーヒー好きとしても名高い服部さんだけに期待大です。お願いします!

大阪はたとえるなら、アメリカ西海岸

服部さん

ここも休みの日によく来ますね。 コーヒーとワインを買って家で飲むという流れ。

ヘメンディンガー綾

わー!すっごいたくさんのワイン。大きな倉庫が丸々ワインカーブみたいです。こんな開放感ある中でお買い物したり、コーヒーが飲めちゃうなんて。おしゃれな休日ですね。服部さんがさっき「東京はニューヨークみたいで、大阪はアメリカの西海岸みたい。」とおっしゃいましたが、ここの雰囲気はまさに西海岸!

服部さん

確かにアメリカ西海岸にありそうな店だよね(笑)。ここは先代もお酒屋さんで、おつまみもちょっと置いてるような店だったんだけど、息子さんの代でこういう風にリノベーションしたんですよ。

服部さん

この近くには、ほかにもフランス仕込みの美味しいパン屋さんがあったり、お好み焼き屋なのに焼きそばも抜群にうまい店があったり、看板が出てないイタリアンの店があります。

ヘメンディンガー綾

知る人ぞ知る、名店ばっかりなんだ。それにしても服部さん、本当にグルメですね。

服部さん

それほどでもないけど、引っ越したい条件って、おいしいパン屋があるか、と公園があるかとか。そういうことも選択条件になってるじゃないですか。

ヘメンディンガー綾

私もずっとそれを基準にしていました。京町堀は全て満たされていますね。ところで、服部さんは大阪に住む良さって何だと思いますか?

服部さん

いろんな楽しみが欲しい人は大阪がいいんちゃうかな。歴史の話にしてもファッションの話にしてもデザインやアートの話にしても、多分大阪はいろいろ提供できると思うんですよね。いま自分がこれに興味あるなと思ったらその興味の対象が近郊にあるから。

ヘメンディンガー綾

あ、その感じすごくわかるかも。私も近年つくづく「お出汁をきちんと取れる主婦になりたい」と思っていたら、服部さんも懇意にされておられる「こんぶ土居」というこんぶ屋さん(中央区)のご主人から出汁の取り方について薫陶を受ける機会もいただきました。こういう出会いも、東京ではなかったんですよね。

服部さん

でしょ。たとえば、歴史ってことを選択するだけでも、大阪市内だけじゃなくて堺市ぐらいまでを見たら天皇陵があり、茶の湯の歴史もあり、えらいことになるでしょ。京都だって奈良だってそうだし。もうちょっと近年に遡って、100年くらいの単位で見ても、貿易の中心だった神戸が近くにあったりするしね。現代アーティストも関西にはたくさん住んでるし、デザイン界でも世界に通用するやつがごろごろいるし。だから人生の中で時代によってそれぞれ自分の興味ごとが変わったとしても、それに対応できるものがいっぱいあるじゃない。

ヘメンディンガー綾

その感じもとても共感できます。東京に住んでたころは、消費一辺倒でした。私(笑)。

服部さん

東京は消費者が抜群に多い街。9割が消費者じゃないかなと思うほど。大阪は、消費以外に携わるひとが4割くらいいる印象なんです。統計をとったわけではないから、あくまでも印象だけど。

ヘメンディンガー綾

私も多分に漏れず、いち消費者で、30代を目前に消費に飽きてきて、暮らしを深めたいと思ったときに、東京ではそれが難しかったんです。ちょうど茶道を始めていたので、帰省の際に堺を訪れたら、千利休が使ってた井戸がぽんと街中にあって「ああ、東京で何やってるんだろう。早く大阪に帰ろう!」と決意しましたね。

服部さん

大阪は歴史的・文化的な下敷きがあるから、クリエイターや、クリエイターに限らずいろんなジャンルの人たちに、それぞれの興味が集中したところで交差して出会えるところだと思うんですよ。つまりいいヒューマンスケールがあるということ。そして時代感も決して遅れているわけでもないので、時代という時間軸を見ても、ちょうどいいスケールなんちゃうかなっていう感じがしますね。

(取材当日、神輿をひいて街を練り歩く地元のお祭りが行われていた)

ヘメンディンガー綾

服部さんはこのままずっと京町堀周辺に住まれますか?

服部さん

僕はダブルスタンダードもトリプルスタンダードもあっていいと思ってるから、都会で暮らしながら田舎との関係持ってるとか、田舎と暮らしながら都会と関係を持っているとかするかも、です。老後も通して、1ヶ所で暮らし続けるっていうのはこれからはないなと思っていて。老後であっても若い人の刺激はうけたいから、いずれにしても大阪とはずっと関わっていくと思います。

ヘメンディンガー綾

いいですね。大阪という街自体がコンパクトだから、少し足を伸ばせばベットタウンもいっぱいあるし。そのスケール感を含めて実は暮らしやすい街。だから人ともつながりやすいし、コミュニケーション次第でどんどん面白い方向に運んでいく街だと改めて実感しました。東京にお住まいのみなさんにも、このコミュニケーションの距離、ぜひ感じてもらいたいですね。今日はありがとうございました!

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