堀江

ハイセンスなファッションやイベントが集まる、
若者からミドルエイジに人気。

話題のショップが揃う堀江のもうひとつの顔。
川と公園のそばでゆとりある暮らしを。

大阪の堀江といえば、ファッション誌の街角スナップ企画などで取り上げられることも多く、大小 のショップが立ち並ぶ「買い物の街」として認識している人も多いかもしれません。ところが、実 際に街を歩いてみると、公園や昔ながらの飲食店も数多い上、手頃に暮らせそうなレトロビル物件 もちらほら。もちろん、都心の一等地ですから、タワーマンションも次々と増えています。 松本朋子さんは、今年1月に沖縄から大阪・堀江に移住してきたばかり。松本さんとは沖縄で知りあ ったという土中萌さんは、新しい視点で不動産を紹介しているサイト「大阪R不動産」を切り盛りする、大阪の街のスペシャ リストです。そんな2人の目線で堀江を見てみると、これまでとはまた違った堀江の姿が見えてきま した。キーワードは「川」「夜」、そして「さみしがりや」です。

インタビュー・テキスト竹内厚

大阪住まい歴はいつの間にか30年超。情報誌の編集からこの仕事をはじめて、今は雑誌、単行本、 フリーペーパー、ウェブマガジンなどの編集、執筆を手がける。大阪R不動産を運営するリノベーシ ョン会社「アートアンドクラフト」の発行する小冊子『ACB』の編集も担当しています。

大阪らしからぬ!? 実はのんびりした街。

中:松本朋子さん

1991年沖縄生まれ。沖縄の観光系専門学校を卒業後、地元のお土産屋さんに就職。退職後、国道事 務所に2年間勤務。特にやりたいことも夢もなく、時間を消費していただけの日常に、突然現れた関 西人に感化され人生について考えるように。2016年より大阪へ移住し、マッサージ師に転職。

左:土中萌さん(大阪R不動産)

1992年金沢生まれ。転勤族の家庭に育ち、名古屋、福井、津、金沢と転々と移住したのち大阪へ。 大阪大学工学部建築工学コースを卒業し、2014年アートアンドクラフトに入社。既存の建物を活か していく仕事に魅力を感じながら、大阪R不動産のスタッフとして大阪のおもしろい物件を日々探し ている。
無性に朝が好きで、朝日がビルと川に映り込む中之島の風景が最近のお気に入り。

竹内さん

こんにちは~おじゃまします。

松本さん

どうぞ。靴のまま入ってください。

竹内さん

家の中まで土足なんですね、面白い!こちらの松本さんのお住まい、1971年築のビルと聞いてましたけど、エントランスからほどよく改修されていい感じですね。

土中さん

「大阪R不動産」で見つけていただいた物件なんですけど、そうですよね、レトロな雰囲気でかわいいんです。目の前は公園ですし。

松本さん

大阪R不動産の記事では、「乙女は公園前がお好きでしょ」というキャッチフレーズで紹介されていて、それが忘れられません(笑)。もうひとつ迷った物件が、「ボンジュール…」。

土中さん

「ボンジュール!メゾン暮らし!」ですね。うん、それも堀江の小さなビル物件です。

竹内さん

建物の名前じゃなくて、キャッチフレーズで覚えてるんですね。

(松本さんが見つけた、大阪R不動産が紹介している物件情報の記事)

土中さん

大阪R不動産のスタッフの間でもそうなんですよ。逆にビルの名前を言われても、どこだっけという感じで。

竹内さん

不動産の扱い方としてフレッシュですね。「大阪R不動産」のことはおってお伺いするとして、まず松本さん、どうして沖縄から大阪へ?

松本さん

率直に言って、ノリです(笑)。今、25歳なんですけど、年齢的に沖縄を出るなら今かなって。そう考えていたころに、大阪から沖縄へ仕事で来ていた今の彼氏と出会って仲良くなって、「大阪来る?」って言うから、「行くー!」って。

竹内さん

ほんと、それくらいの気軽さでみんな大阪に来てほしい(笑)。

土中さん

沖縄を出るタイミングを探してたこともあるんですよね。

松本さん

そうです。国道事務所の契約社員として働いてたんですけど、ちょうど契約が切れたところだったので。

土中さん

沖縄のご家族に話したらどんな反応でした?

松本さん

「行ってこようねー(行っといで)」ってすぐにOK。うち4人兄弟なんですけど、家族は私にも一度家を出てほしかったみたいで。だから私、「箱出され娘」なんです。

土中さん

だいたい箱に入れておくものですけどね(笑)。

竹内さん

それまで大阪にどんなイメージを抱いてましたか?

松本さん

帝王が歩いてると思ってました(笑)。「大阪を勉強しいや」って彼氏にビデオを見せられてたので。こわい街やなぁと。

竹内さん

こてこての大阪の街を竹内力が闊歩する、「ミナミの帝王」のビデオですね。なかなか偏った勉強法ですよ(笑)。
※ミナミの帝王…大阪を舞台に、金融や法律を題材にしたマンガ。竹内力で映像化されたVシネマ、映画もヒット。正式名称は「難波金融伝・ミナミの帝王」。

松本さん

そうなんです。実際に大阪へ来てみたらハトと子どもが多くて、なんて平和な街なんだ!と思いました。

竹内さん

「ミナミの帝王」との落差もあるでしょうけど、実際、堀江は緑も少なくない、ピースフルな街です。

土中さん

そうですね、堀江の中でも、東側はカフェや衣料店などのお店が多く密集していて、西側へ行けば公園も多くて、過ごしやすい街になってきます。長く暮らしているファミリー層の方も多いですし、朋さん(松本さん)のようなレトロなビルで暮らす県外の方も結構いらっしゃいます。

松本さん

確かに、生粋の大阪人ってそこまで出会ったことがないかも。意外と地方から大阪に移住している人が多い印象ですね。

徒歩ですべて事足りる、職住近接の暮らし。

竹内さん

松本さんが大阪での住まいを堀江に決めた理由はなんですか?

松本さん

ほんとに私は大阪のことを何も知らなかったので、彼氏がピックアップした物件から、建物の見た目とか直感で選びました。

竹内さん

そこで「大阪R不動産」のキャッチフレーズが参考になったと。一般的には、堀江といえばおしゃれな街だと思われています。

土中さん

大阪R不動産では、「おしゃれ」という言葉はあまり使わずに物件を紹介するようにしているんです。堀江については、なんばや心斎橋などの繁華街まで歩いていける距離に位置するのに、ゆったりとした雰囲気で住めますよと推すことが多いですね。

竹内さん

堀江の街そのものも賑わっていますし、難波、道頓堀、心斎橋という、大阪で「ミナミ」と呼ばれてるエリアまで、歩いても10分ほど。

(堀江から歩いて10分ほどでこの賑わい。道頓堀でおなじみ「かに道楽」前の様子。)

松本さん

そのミナミ(➘)…ですか、道頓堀のあたりは、事前に思ってた大阪に近い感じでしたけど、私の家の周りは小学校や中学校も多くて、ほんとにのんびりしてますね。

竹内さん

ミナミの発音、大阪弁でややこしいですよね(笑)。それはともかく、アクセスのよさと、都心部にしてはゆったりした環境、その両方が堀江には揃っています。

松本さん

私は、電車でいろんなところに行けるだけでちょっとうれしいんですけど、地下鉄の乗り降りはちょっと大変。地上に出る時に必ず迷いますし、大阪の人は歩くスピードが速い気がして、何度かひかれそうになりました、人に(笑)。

土中さん

人に!?でも確かに、地下鉄の梅田駅やなんば駅を降りたあたりは、人が多くて真っ直ぐに歩くのが難しい場所がありますね。

松本さん

それもあって、毎日、電車に乗らなくていいように、仕事は家から歩いて行ける場所で見つけました。

土中さん

それ、わかります!1年半くらい、電車通勤をしてみたんですけど、今は私も職住近接、職場のすぐ近くに住んでいます。私たちくらいの世代でも、ひとり暮しできる賃料の物件が都心にあることって、東京との違いだなと思います。しかも、それがものすごく小さな部屋というわけでもなく、快適に暮らせる部屋を見つけられますから。

竹内さん

ちなみに、松本さんの住まいにはコンロがありませんね。

松本さん

私も彼氏も料理をしないのと、近くにごはん屋さんがたくさんあるので困ったことは一度もないです。

竹内さん

潔い暮らしです。

夜のリバーサイド散歩もオススメです。

竹内さん

それではちょっと街へ出てみましょう。松本さんの家の中は、土足OKに改装をしたハードめな印象でしたけど、ビルそのものは「乙女」にも向いた、グリーンの色遣いが印象的です。

土中さん

せっかくなのでビルの前で写真撮っときましょうよ。朋さん、普段はどんなお店に行ってますか。

松本さん

ラーメン屋かな。あっカフェもたくさんありますよ。

竹内さん

正直な答えと乙女も意識した取材向けの解答と、どちらもいただいてありがとうございます(笑)。仕事は夜勤だそうですね。

松本さん

そうなんです。仕事の前後とか、休みの日でも夜に街を散歩してることが多いですね。

竹内さん

たとえば、どのあたりへ行きますか。

松本さん

今は暑いので、川の方に出てミナミエリアに向かっていくことが多いかな。川に出てる船を眺めたりしています。

土中さん

道頓堀川まで家から近いですし、川沿いにいけば難波まで真っ直ぐなのでわかりやすいですよね。

松本さん

先日、沖縄から遊びに来た友だちと道頓堀の「グリコ前」で待ち合わせたんですけど、散歩するのがいつも夜なので、昼に歩くと迷ってしまって(笑)。「夜の光がないから迷った」って友だちに連絡したら、「虫か!」って言われました。

(道頓堀にある「グリコ」の看板は観光名所のひとつ)

竹内さん

たしかに昼と夜で川の印象はかなり違っているので、わからなくもない話です。道は真っ直ぐですけどね。

松本さん

夜の川のほうがきれいだと思います。夜でもランニングしてる人や犬の散歩をしてる人が結構いますよ。

竹内さん

昭和の大阪が舞台となっている、宮本輝の小説『道頓堀川』も読んでいただきたいですね。ちなみに、いまは道頓堀川と木津川だけになってますが、昔の堀江は長堀川、堀江川など、ぐるりと川に囲まれた街でしたから、川の気配が堀江の街全体に残っている気もします。

土中さん

大阪は、自転車で移動する人が多いのですが、朋さんは自転車には乗りませんか?

松本さん

買わなきゃと思って、近所の自転車屋さんに行ったんだけど、スタイリッシュな自転車にまたがってみたら、足が地面から離れなかった。あっ私、自転車乗れないんだ…と思って(笑)。お店の人に後ろを持ってもらって、「離さないでくださいよ!」って言いながら少し練習しました。

竹内さん

いまどきの自転車屋では見かけない光景だ(笑)。沖縄ではあまり自転車に乗らな い?

松本さん

ほとんど乗ったことがないです。車移動も多かったので、大阪に住みはじめてからが、人生でいちばん歩いてると思います。

土中さん

歩く範囲でいろんなことが間に合ってるんですね。お買い物とかはどうしてます か?

松本さん

あまり買わないんですけど、働いてるお店のお姉さん方に誘ってもらって、心斎橋に行くこともあります。

土中さん

堀江は家具屋さんが多い街でもあります。

松本さん

まだ堀江で家具を買ったことはなくて…。

竹内さん

人によっては、堀江といえばカフェと家具屋ですけど、夜型の松本さんにとっての堀江はまた違ってるようですね。

松本さん

あっ、神社もところどころ見かける気がします!

大阪の新たなキャッチフレーズが決定!?

竹内さん

R不動産は全国のいろんな地域で運営されていますけど、大阪R不動産ならではの特徴ってあるんでしょうか。

土中さん

物件を紹介するアイコンとして、「水都大阪」というのがあります。水辺にある物件が特徴的ですね。あとは、商店街の近くや商店街の中にある物件も少なくないので、「商店街」というアイコンもつくりました。

竹内さん

これは大阪に限らずでしょうけど、どのエリアでどんな住まいを選ぶかによって、その街の印象は随分変わりますよね。

土中さん

ほんと、そう思います。私たちも、物件を選んで載せるときには、それがどんなエリアにあるかも大事にしたいと思っています。

竹内さん

半年ほど大阪に住んでみて、松本さんは大阪のよいところって何か感じましたか。

松本さん

人がやさしいです。さみしがりやには適した街だと思います。

竹内さん

いいこと言った!

土中さん

店でひとりでご飯を食べてたりしたら、知らない人でも普通に話しかけてきますよね。そこも東京にはないかもしれない、大阪の魅力だと思います。

竹内さん

そんなに話しかけてくるという印象ですか?ずっと大阪に住んでいるとそのあたりがわからない。

松本さん

仕事帰りに近所のバーに入ったら、「よくこんな入りづらそうな店にひとりで来たね」ってまずお店の人に言われて、隣に座ってるおじさんからいろいろ話しかけられて、最後は「よっしゃ、今日はおごるわー」って流れに。今もときどき、その店は行ってます。

土中さん

もう顔なじみのバーがあるんですね。だけど、堀江だったら女性ひとりで飲んでいるのも自然ですよね。

松本さん

おひとりさまも結構たくさんいますよ。

土中さん

大阪R不動産のスタッフ間で話していたことがあるんですけど、大阪でシェアハウスなどのシェア物件が東京ほど流行らない理由のひとつとして、大阪ではわざわざそういう場所に行かなくても、ちょっと街に出れば友だちができるからじゃないかって。

松本さん

そうだと思いますね。

竹内さん

さみしがりやにやさしい街、大阪。これからの大阪のキャッチフレーズはこれでいきましょうか(笑)。